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デジタルインクルージョン

インクルーシブなデジタル社会を構築することで、国は国民とつながり、国内総生産(GDP)を拡大し、雇用を創出し、持続可能なイノベーションエコシステムを開発できるようになります。

成功を収めるための原動力としてデジタル化が成長を見せています。しかし国や企業、それに個人も、テクノロジーが秘めた可能性をなかなか引き出せずにいます。将来を見据える世界のリーダーが国家的なデジタル化戦略を実現するにはどうすればよいでしょうか。同様に、企業がテクノロジーの強みを引き出し、国民がデジタル革命に積極的に参加するにはどうすればよいのでしょうか。

シスコはこうした問いに答えるために、2015 年に Country Digital Acceleration(CDA)プログラムに着手しました。国家レベルでのデジタル化は経済や自治体、人々の生活を改善できる機会であり、CDA を推し進めることでデジタル化の価値をいち早く実現できます。インクルーシブなデジタル社会を構築することで、国は GDP を拡大し、雇用を創出し、持続可能なイノベーションエコシステムを開発できるようになります。

現在進行中のものと終了済みのものを含めると、CDA にはこれまでに 50 ヵ国で 1,300 件を超えるプロジェクトがあります。以下にその例を示します。

  • インドでは、ケララ州の IT ミッションと提携してデジタル技術とデータ科学の利便性を州の農業従事者に提供しています。田んぼやエビの養殖場ではアグリデジタル インフラストラクチャを作成し、ダーマダムからタリパランバの地域にかけて開設した農村ナレッジセンター(VKC)ではリアルタイムで作物の生育状況を提供するとともに、作物の現在価格や農業に関する専門的なアドバイスを提供しています。VKC を利用することで、市場の需要と現在の生育状況に応じてより無駄なく持続可能な方法で作物を育て、管理することができます。
  • また、インド工科大学(ITT)と Bombay Communications 社、Kirat Communications 社と提携してマハラシュトラ州パラー県にある 20 の村をインターネットに接続しました。インターネットのおかげで、地元の女の子が通う学校ではオンラインの教育リソースにアクセスできるようになりました。ワルリ絵画の芸術家で構成される女性の手工芸協同組合は、製作物をオンラインで販売し、世界の市場に参入できるようになりました。地元の NGO パートナーの 1 つである Tata Trusts は行政サービスへのアクセスを利用することで、オンラインの教育コンテンツのほか、健康に関するアドバイスから農産物の市場価格に至るまで多岐にわたる情報を、アプリを介して村の住民に提供しています。
  • カナダではトロント市と提携して、低所得層のコミュニティにインターネットアクセスを提供しています。新型コロナウイルス感染症がトロント市で確認されると、インターネットにアクセスできる人とそうでない人との間で情報格差があることがはっきりと示されました。図書館や学校などの無料でインターネットアクセスを提供していたスペースが閉館や休校となり、低所得層のコミュニティでは信頼できるインターネット接続へのアクセス方法を失って過度に孤立する結果となりました。そこで CDA とシスコのトロント イノベーション センターはトロント市をはじめ、さまざまなパートナー(BAI Canada 社、Beanfield Metroconnect 社、Bell Canada 社、Century Concrete Products 社、OnX Canada 社、Southwinds Engineering 社、Toronto Mesh 社)と提携して、「デジタルキャノピー」を立ち上げました。デジタルキャノピーでは、トロント在住の 2,000 人の低所得者に無料で Wi-Fi アクセスを提供しています。現在ではこのソリューションは 25 か所に展開され、13,000 人の住民に無料で Wi-Fi アクセスを提供しています。
  • 英国では、政府の資金援助を受けた共同イノベーションプロジェクトである 5G RuralFirst をストラスクライド大学と共同で主導しています。遠隔地のオークニー諸島とシュロップシャー州、サマセット州の農地に 5G の試験環境を構築し、5G テクノロジーが地方企業やコミュニティにもたらす革新的な可能性を実証しました。農村コミュニティにインターネット接続を提供することで、農村地域の産業に適したスマート農業とモノのインターネット(IoT)のユースケースを実現しています。このコンソーシアムは、英国でも指折りの遠隔地であり過酷な環境でもあるいくつかの地域に 5G テクノロジーを導入し、地方における 5G 導入のビジネスケースとして世界に通用する品質の接続を全国的に展開できることを実証しました。
  • また、Innovate UK 社との共同出資によるイノベーションプロジェクト E-Flex コンソーシアムを主導し、V2G(Vehicle-to-Grid)テクノロジーの価値を実証しています。V2G は電気自動車のバッテリに蓄えられている未使用エネルギーを電力網に送る技術です。E-Flex コンソーシアムは、V2G 試験に使用するためにさまざまな参加組織から約 200 台の車両の提供を受けています。その組織の 1 つであるグリニッジ王室特別区では、5 台の V2G 対応車両を利用することで、9 ヵ月間で 1500 kg 以上の CO2 の排出が回避されました。これらの車両は、多くの再生可能エネルギー源を利用できる電力網のオフピーク時に充電され、反対にピーク時には電力網にエネルギーを供給することで、炭素排出量の多いエネルギー源の需要を低減する効果が得られました。この炭素回避の水準は、68 本の成木が 1 年間に吸収する CO2 の量に相当します。
  • ブラジルでは、BNDES(Banco Nacional de Desenvolvimento Econômico e Social)と提携し、公立学校での教育ツールとしてテクノロジーを活用する BNDES 教育コネクテッドイニシアチブを支援しています。シスコはブラジルの学校と従来の教育のあり方を変えるのに必要なネットワーク接続とセキュリティ インフラストラクチャの設計、実装、検証に携わり、ブラジル北東部にある 87 の学校をネットワークに接続しました。
  • フランスのオーヴェルニュ ローヌ アルプ地域圏には、中規模の工業企業が国内で最も集中しています。しかし、この地域における工業関連の雇用は過去 20 年間で劇的に減少しています。シスコは、この地域の工業企業に接続とサイバーセキュリティの専門知識を提供するためのコンソーシアムに参加しています。これにより、そうした企業のデジタル トランスフォーメーションを支援し、地域の雇用創出に貢献することを目指しています。
  • オランダでは、ロッテルダム港や IBM 社と協働し、2030 年までに自律式の出荷に対応できる港の整備を進めています。
  • アイルランドでは、自動運転車の試験環境を構築するために、フューチャー モビリティ キャンパス アイルランドの設立を支援しています。
  • 米国では、全米暖房冷凍空調学会(ASHRAE)と協働し、1970 年代に建てられた本社の社屋をよりスマートかつ持続可能な、太陽光を利用した建物に変える取り組みを行いました。

CDA プログラムは活発でインクルーシブな経済を促進し、デジタル化がもたらす利便性をあらゆる人に提供するものです。